うつくしいもの

「違う!

もしそうなら、
私は今優雅と居ない」


そう口にして、
思わずハッとしてしまう



私の肩を押さえていた手が離れ、

優雅自身も私の上から離れて行く



それが、優雅の気持ちも離れて行くようで、怖い





「そうじゃないの……」



向けられている優雅の背に声を掛けるけど、

言葉が続かない



何を言っても言い訳になるし、

何がそうじゃないのか、
自分で口に出しておきながら分からない




もし涼雅が私に対して少しでも気持ちが有ったのならば、

最後のライブの出待ちの時に、
あんな風に彼は私を傷付ける事はしない



それに、もしそうならば、

私はあの日寺岡さんにスカウトされる事もなく、
この世界に居ないかもしれない



そうなると、優雅とは今こうやって一緒に居ない



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