うつくしいもの

「――何しにって……。
誰って、私は……」



そう言えば、涼雅に1度も私は名乗らなかった



名前を訊かれ無かったから




そんな私は、

彼にとって、一体誰なのだろうか?




「あなた一体誰ですか?

俺がファンの子と話してんのに、
割って入って来るし。
その上、健太に軽々しく笑い掛けてさぁ~」




今迄、こんなにも誰かに傷付けられた事も、

傷付いた事も無かった




なんか、勝手に涙が溢れて来て、

声を出して泣いてしまいそうになる




「涼雅、何言ってんだよ……。

この子は、ほら、よく俺らのライブに来てくれてる子で。

そんな言い方ないだろ?」


健太は周りのファンの子達の手前、

あの夜の事は口にしない


だけど、そうやって私を庇ってくれた



やはり、この人は本当に優しい



あの夜貰ったカイロよりも、

今のその言葉の方が優しい



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