真夜中の魔法使い
「ミユウは覚えてないか。小さかったから。」
「うん。二人で部屋にこもっていたのは知っていたけれど。」
ミナトの視線がふっと宙を彷徨う。
「父さんが無のエネルギー空間を作ってくれて、そこで呪文の練習をしていたんだ。」
聞きなれない単語に首をかしげる。
「無のエネルギー空間?」
「一切の魔法エネルギーを除外した空間だよ。」
「えっそんなことできるの?」
魔力は魔法使いが体内に有しているものと、その空間に根付いたものがある。
国全体が魔力で充満しているほか、この家は先祖代々受け継がれてきたものだから、家自体にも強い魔力が染み込んでいるだろう。
そんな中で魔法エネルギーを無にすることが可能なのだろうか。
「相当高度な技術が必要なことは確かだよ。でも父さんはそれを簡単そうにやっていた。
学校なんかでは普通の教室で呪文の練習をするのに、わざわざそんな空間を作るあたり、相当なもの好きだったって言えるね。まあ、魔法学者なんてみんなそんなものなんだろうけど。」
口では小言をいうようだけれど、ミナトの表情は真逆だった。