真夜中の魔法使い



「ミユウは覚えてないか。小さかったから。」




「うん。二人で部屋にこもっていたのは知っていたけれど。」




ミナトの視線がふっと宙を彷徨う。




「父さんが無のエネルギー空間を作ってくれて、そこで呪文の練習をしていたんだ。」





聞きなれない単語に首をかしげる。





「無のエネルギー空間?」





「一切の魔法エネルギーを除外した空間だよ。」




「えっそんなことできるの?」




魔力は魔法使いが体内に有しているものと、その空間に根付いたものがある。


国全体が魔力で充満しているほか、この家は先祖代々受け継がれてきたものだから、家自体にも強い魔力が染み込んでいるだろう。


そんな中で魔法エネルギーを無にすることが可能なのだろうか。




「相当高度な技術が必要なことは確かだよ。でも父さんはそれを簡単そうにやっていた。
学校なんかでは普通の教室で呪文の練習をするのに、わざわざそんな空間を作るあたり、相当なもの好きだったって言えるね。まあ、魔法学者なんてみんなそんなものなんだろうけど。」




口では小言をいうようだけれど、ミナトの表情は真逆だった。






< 148 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop