真夜中の魔法使い
思い出の曲
懐かしい旋律に包まれていた。
お父さんが好きでよく聴いていた曲だ。
何でもお母さんと出会うきっかけになった運命の曲だとかで、朝食の時間は決まってこの曲だった。
お父さんがいなくなってからは聴かなくなっていた曲。
「やっぱり、いいなーー」
ぼんやりと目を開けると、部屋は優しい朝の光に包まれていた。
本当に昔に戻ったみたい・・
先ほどの声の主、ミナトは向かい側のソファーに背を預けたまま目を閉じていた。
聞かなくったって分かる。
お父さんとお母さんを思い出しているんだ。
まだ体は怠くて動きそうにないけれど、穏やかな兄の表情を見ることができて、それだけで幸せだと思った。