真夜中の魔法使い



また、アキの笑顔が見られた。

ただそれだけのことがこんなに嬉しいことだなんて思ったことがなかった。

そんな感動に浸っていると


ギュッ
「いたーっっ!」



何かを握り潰すような音がした後、アキの叫び声が再び部屋に響き渡った。




至近距離で大声を出されて、驚きの余りバランスを崩してしまう。
生憎自分の身体を支えるほど力は戻っていなくて。


お兄ちゃんに倒れかかる形で受け止めてもらわなければ、今頃床の上に転がっていたことだろう。



「そんなに力を込めなくてもいいのに・・」



アキは涙目で腕をさすっている。

信じたくはないが、さっきのは兄がアキの腕を掴んだときの音らしい。




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