真夜中の魔法使い
「さっきからうるさいんだよ。持て余してるなら働け。メシ。」
ミナトは謝るどころか、貴族をこきつかうつもりらしい。
「ちょっと、お兄ちゃん。それは・・」
「しばらくここにいることになるだろうから、働いてもらわないと。」
心底面倒だ、といった表情である。
「えっそうなの!?」
「連れ戻されたら、2度と出て来れなくなるぞ。」
「うん。もちろん、暮らしのアテはあるんだけど。いまの状況じゃ迂闊に外に出られないよ。」
そういって頷くアキの顔色は、先ほどよりも悪くなっている。
そうだ。この家は強い魔法で守られているけれど、外に出たらすぐに見つかってしまうだろう。
傷だらけで弱っていたアキの姿が脳裏に蘇る。
「さあ、ミユウはもう少しリハビリを続けないと。」
現実に引き戻してくれたのは妹にはとことん甘い兄の声だった。
「うん・・!」
なんだかんだでこうして、クリスマスの日に大切な人たちと一緒にいられるのだ。
笑顔で過ごしていたい。