真夜中の魔法使い



「さっきからうるさいんだよ。持て余してるなら働け。メシ。」


ミナトは謝るどころか、貴族をこきつかうつもりらしい。


「ちょっと、お兄ちゃん。それは・・」


「しばらくここにいることになるだろうから、働いてもらわないと。」


心底面倒だ、といった表情である。


「えっそうなの!?」


「連れ戻されたら、2度と出て来れなくなるぞ。」



「うん。もちろん、暮らしのアテはあるんだけど。いまの状況じゃ迂闊に外に出られないよ。」


そういって頷くアキの顔色は、先ほどよりも悪くなっている。


そうだ。この家は強い魔法で守られているけれど、外に出たらすぐに見つかってしまうだろう。



傷だらけで弱っていたアキの姿が脳裏に蘇る。



「さあ、ミユウはもう少しリハビリを続けないと。」


現実に引き戻してくれたのは妹にはとことん甘い兄の声だった。



「うん・・!」



なんだかんだでこうして、クリスマスの日に大切な人たちと一緒にいられるのだ。



笑顔で過ごしていたい。



< 227 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop