真夜中の魔法使い
「普通の基準が何か、なんてわからないもんね。それでも、アキは変わってるなって思うし、そうだから私と一緒にいられるのかも。」
「そうかなあ。ミユウは誰とでも仲良くできると思うけど。」
「うーん・・・
私、やっぱりずっと学校に行ってない分、わからないこともいっぱいあるんだと思うんだ。”普通”に育っていない分、理解できないこととか、うまくできないこととか、いくらでもあるんだろうなって。」
アキはこうして、急に話が真剣になってもしっかり聞いてくれる。だからミユウも気を張らずにいることができるのだ。
「それは誰だってそうだよ。」
「そうなの?」
「うん。完璧な人がいたら怖いじゃない。自分に知らないこと、できないことがあるっていうことを知っているだけでも十分なんだよ。」
もしかしたらそれは、アキもまた、ミユウ以上に、”普通”に育ってきていないからなのかもしれない。
そんなアキだからこそ、少し説教じみたことを言われても素直に聞けるのかもしれない。
アキ以外の同級生の記憶がないからわからないけれど。
自分の存在が、アキが、そして、二人の関係性が、どれだけ特別なのか、もしくはありふれたものなのか。その判断基準を、ミユウは持っていなかった。
「そっかあ。でもさ、アキ。」
ミユウはもう冷めかけているポタージュを飲み干すとアキに向かってニヤリと笑みを向けた。
「ん、なあに?」
「園芸の趣味は黙っていたほうがいいかもよ。私でも、その趣味が女の子にモテなさそうってことくらいわかるもん。」
「なっ!余計なお世話だよ~!別にモテなくてもいいし。
先に、温室に行ってるからね!」