真夜中の魔法使い
「ちゃんと全部食べて、片付けてから来るんだよ?」
「はーい。」
怒りながらも、過保護なところは、少しお兄ちゃんに似てきたのかもしれない。なんてことを思いながら、マフィンの残りを口に運んだ。
ミユウの食べる速度が極端に遅いことを知ったアキが、ミユウ専用の食器に保温の呪文をかけてくれたから、こちらはまだ十分に暖かい。
食器を片付けてから、ミユウは一度地下へ向かった。
部屋で読んでいた本を戻すためである。
呪文を使ってしまえばいちいち地下まで降りる必要などないのだが、ちゃんと元あった位置に戻さないと兄に怒られてしまうのだ。膨大な蔵書の中、正確な場所に戻すには手作業の方がかえって早い。
「あれ、これはなんだろう。」
図書室の机の上に、丸められた書類がひと束置いてあった。
杖で触れても特に反応はないので、「邪魔よけ」はかかっていないようだ。
特定の人以外に知られたくないような内容の書物には、「邪魔よけ」がかけられているものだ。そうすることで、情報が漏洩することを防ぐのだ。
「なになに・・学会の出席表?
えっこれって、ここにあっちゃいけないやつだよね!?」
ミユウは本を戻すのも忘れて、階段をかけあがった。