真夜中の魔法使い
キャンパスを行き交う学生たちを見るたびに、いつか自分もここに通いたいと、夢を膨らませたものだ。
「あっ・・ここだ。」
機能的だけれど、そのエントランスに立ち並ぶ柱が印象的なこの建物には、見覚えがあった。
どことなく古代の神殿を思い起こさせる柱の間を抜けて、建物の中に入る。
受付で要件を告げると、ほどなく見慣れた姿がこちらにやってきた。
「ごめん。問題なく来れたかい?」
「うん、大丈夫だよ。それより、これ!」
持ってきた封筒を差し出すと、ミナトはありがとう、と受け取った。
「ミユウ、学校で遊んでいくか?そうすれば一緒に帰れるし。」
とても16歳の妹に言うセリフには思えないが、兄の表情はいたって真面目だ。
「学校で遊ぶって何よ、お兄ちゃん。それにアキの手伝いをする約束しちゃったから帰らないと。」
「あいつとの約束なんて明日でも果たせるだろ。久しぶりの外出で危ないし、今日は・・」
「心配しすぎだよ。まっすぐ帰るし大丈夫だから。」
これ以上言い合っていってもらちがあかない。多少強引でも、この場合、言い切ってしまったほうが勝つのだ。
「家についたら連絡すること、いいね?」
狙い通り、ミナトは説得を諦めたようだ。
「はーい!じゃあ、頑張ってね!」
ミナトの気が変わらないうちに、とギュッと抱きつくとすぐに出口へ向かった。