真夜中の魔法使い
魔法学研究棟を出て、来た道を引き返す。
ミユウは足こそ止めることはないが、キョロキョロと、しきりにあたりを見回していた。
「あっ!」
ミユウのお目当てが一匹、日当たりの良いベンチの上にちょこんと座っていた。
「にゃー」
ミユウが近づいても動じることなく、悠然とした態度がいかにも猫らしい。
そう、ミユウが探していたのは猫である。
この大学にはどこからやってきたのか、もとは誰かの飼い猫だったのか、定かではないが、常に何匹かの猫が棲みついていた。
「はじめまして、かな?君は新入りだよね?」
大学に来た時の楽しみといったら猫たちと戯れることである。
ここの猫たちは人の多い環境に暮らしているため、とても人懐っこい。
「しかも毛並みもきれいだもんね。どこからきたのかなあ。」
ゴロゴロと機嫌よく喉を鳴らす黒猫に、手を伸ばした。
「撫でてもいい?」
「にゃお」
本当にわかって返事をしているのだとしたらこの猫は天才なのかもしれない、そんなことを思いながらミユウは猫を優しく撫でた。