真夜中の魔法使い
暖かい家
「ち、ちょっと!いくら親戚の家って言っても勝手に入っていいの?」
挨拶をすることもなくどんどんと奥へ入っていってしまうハルトを、慌てて呼び止める。
「構わない。凍えたくなかったらさっさと来い。」
思いっきり面倒そうな顔をして振り返ったハルトは、それだけ言うと正面の扉を開けて入っていってしまった。
そう言われてみるとたしかに手足の先が冷えきってしまっている。
開かれたままの扉から微かに流れてくる暖かい空気に誘われて、ミユウも家の中へと入っていった。
扉の先はどうやらリビングのようで、2階までの吹き抜けになっていた。
目を引くのは部屋の真ん中を占領している大きな暖炉。
「わあ、すごい・・・」
ミユウの囁きも、遥か上の天井までよく響いて聞こえる。
自然と足は暖炉の方へと向かっていく。
部屋が静まり返っているので、パチパチと薪の燃える音がよく聞こえる。
ハルトの姿も、家主のおじさんの姿も見当たらない。
どこへ行ってしまったのだろうと思いつつも、両手を暖炉に向かって差し出して温める。
「勝手にうろうろするのも悪いし、ね。」
自分の身に起こったことを忘れそうになってしまうほど居心地のいい空間だった。
一瞬まどろみかけた意識を覚ますため、ふるふると首を振った。
「どうにかして二人に連絡を取らないと。」
心配してアキが外に出てしまうような事態だけは避けなければいけない。