真夜中の魔法使い
「そろそろ本題に戻るぞ。」
すっかりいつもの無愛想な表情に戻ったハルトを見て、ミユウは重大なことを思い出したのだった。
「あっっ!!!」
ガタン、と大きな音をたてて立ち上がったミユウを見て、ヨウさんと、そしてあのハルトですらポカンとしていた。
「お家に連絡しないと!今頃アキもお兄ちゃんもきっと・・・」
なかなか家に帰らないミユウをどれだけ心配していることか。
申し訳ないというか恐ろしい。
アキはともかくお兄ちゃんは、私のこととなると一気に周りが見えなくなっちゃうから・・・
「ミユウちゃん、落ち着いて。とりあえず座ろう!大丈夫だから!」
急に青ざめたミユウを見てヨウさんは必死になだめようとしてくれているけれど。
「ヨウさんはお兄ちゃんを知らないから・・・」
ミユウはやっとのことでそれだけ言うと、へなへなと椅子に座った。
ぎゅっと目をつぶると涙が滲んだ。
ここに来てからしばらく経ってしまった。
大学でミナトと別れてから、とっくに1時間は経過しているはずだ。
転移であれば一瞬で帰れるはずなのに、まだ戻らないミユウを、二人は相当心配しているはずだ。
「はあ。お前そろそろわかってもいい頃だと思うけど。」
「何を分かればいいのよ・・。つい謎解きに夢中になっちゃってたけど、はやく無事を知らせないと今頃お兄ちゃん・・何をしているかわからないもん。」
涙声になりそうなのを必死に抑えるので精一杯だ。
「ミユウちゃんのお兄さんはそんな危険人物なのかい?」
「いいから黙ってろって。」
様子がおかしいミユウを心配してくれているのだろうが、コメントがずれているヨウをハルトが咎める。
「俺がこの状況に対して何の対策もしないと思うのか?」
「・・・」
鋭い視線を向けられてどう返事をしたらいいのかわからない。