真夜中の魔法使い
「そうです。アキ・フレッチャー。ミユウと一緒で16歳。
街の中央区に住んでいます。
先日の件はすみませんでした。無礼を承知の上でしたことです。」
アキは繋がれたまま、頭を下げていた。
よくもまあ、バランスをとれるものだ。
お兄ちゃんはというと、腕を組んだ状態でアキのことを睨みつけていた。
「なぜ、中央区に住むような身分、しかも名門のフレッチャーを名乗る者が夜に呪文を破ってまで来たんだ?」
そうだ。中央区といえばこの国を治める王の宮殿を始め、貴族たちが住む区画なのだ。
アキって貴族の御子息だったの・・?
「ミユウにその花を渡すため、です。あの晩その花が咲いたから。」
「えっ・・夜に?」
アキの言葉に引っかるものがあって、頭の中を一気に占領されてしまう。
「夜に咲く花、ねぇ・・。これは大ヒントだわ。」
ブツブツと呟いて、完全にマイワールドに入り込んでいる。