真夜中の魔法使い
「それでは、おじゃましました。」
アキはお兄ちゃんに向かって挨拶をすると、こちらにやってくる。
「今夜、また来てもいい?」
「う、うん」
お兄ちゃんには内緒にしてね、と言いたいのだろう。向こうまで聞こえないような小声だった。
とっさにOKしてしまったけれど、お兄ちゃんにバレずに部屋に入れることができるだろうか。
ひとつ面倒ごとが増えてしまった、とそっとため息をつく。
しばらく進んでからアキはもう一度振り返ってお辞儀をした。
第一印象はアレだったけれど、本来は身分相応に礼儀正しい少年なのだろう。
お兄ちゃんも丁寧にお辞儀を返していた。