真夜中の魔法使い
お兄ちゃんとの話が終わるまで、2階のアキが泊まっている部屋で待つ。
しばらくすると階段を上る足音が聞こえてきた。
「それが御曹子を迎え入れる姿勢なの?」
ベッドで横になっていたミユウを見て、アキはからかうようにそう言った。
「それは悪うござんしたーっ」
指摘されると少し恥ずかしくなってしまう。
起き上がってきちんと座り直した。
「それで、お兄ちゃんと何話してたの?」
「んー?ひみつ。」
やっぱり。教えてくれないか。
それよりも気になることがひとつできてしまった。
「ねえ、さっき私に注意したのは誰よー?」
「僕は偉いからいいの。」
アキは先程注意したことを棚に上げて、人の家のベッドに寝転がっていた。
泊まっている間はアキに貸している部屋だから良いのだけれど。
「権力を振りかざすなんて汚い!」
「あはは。
ところでミユウ、ここってもしかしてお父さんのお部屋?」
いつの間に身につけたのか、ミナト流の華麗なスルーで話題を変えるアキ。
視線の先には、寝室に置くしては大きな本棚だ。
「うんそうだよ。お父さんは魔法学者だったから。」
「知ってるよ。」
「えっそうなの?」
「もちろん。リョウヤさん、でしょう。立派な魔法使いだった。」
「な、んで・・?あったことあるの?」
思わぬ事実にびっくりを通りこして頭が真っ白だ。
「僕、一時期リョウヤさんに魔法を習っていたんだ。」
アキは優しく微笑んでいる。