真夜中の魔法使い
いつもの調子を取り戻してヘラっと言うアキ。
うそ、ではなかった。
握り締められた右手が、微かに震えている事に気づいてしまったから。
「このまま、隠してしまえたらいいのに。」
誰から、なんて言わなくてもアキだってわかっている。
「ミユウ、独占欲強いんだから。困っちゃうなあ。いや、嬉しいけどさ。」
だからそうやってはぐらかすんだ。
「ちょっと、深読みしすぎだよ!」
バカみたいだ。
二人共、願っていることは同じなのに。
「じゃあ、行くね。」
「気を付けて。」
ツン、とこみ上げてくるものを堪えて顔にぎゅっと力を込める。