真夜中の魔法使い



初めてその夢を見てから数日、毎晩繰り返して同じ夢を見ていた。


そのせいでどんなに眠りにつくのが遅くても、眠りが浅く、直ぐに目覚めてしまっていた。



その日も同じように深夜のうちに目が覚めたのだが・・・



安眠できないことを諦め、ぼんやりと目を開けると、視界の隅を光がかすめた。




「な、なに・・?」




閃きではなく、実際の、物理的な光だ。

何が光っているのだろう。




どうやらその光はほのかに一定のリズムで点滅しているらしい。




異様な事態に一気に頭が覚醒した。




体を起こして半ば無意識に枕元の杖を手で引き寄せる。




光の元は机の上だった。




「もしかして、月下美人?」



ベッドをおりて近寄ると、確かに瓶に入った月下美人の花びらが光を放っていた。



月の光の反射ではなく、花びら自体が微かに光っている。




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