俺は後輩でしかなく
独特な雰囲気だった。
なんたらの絵だとか、模型やらが並べられ、棚には瓶、絵の具らしきものなどたくさんある。
俺には絵の才能なんてうものは皆無といっていいし、有名な、なんならとかいう人物が描いた絵なんかも、名前を覚えていないし、とくにひかれることはなかった。
けれど。
――――すげぇ。
部屋の机は全て端のほうに寄せられ、あいたスペースに描きかけの絵が残されていた。その傍らには机と椅子。机にはパレットと筆がそのまま残っていて、人だけが不在だった。
先生、いねぇじゃん。
俺はそう思ったが、それよりもその絵に目を奪われていた。
それはこの辺の、高校のある辺りの風景ではないな、と思う。となると、どこかの場所なのだろうが、どこか田舎さを感じる絵だった。
勝手なイメージだろうが、美術部の部員はほとんどがアニメやら漫画やらが好きなやつばかりだと思っていた。俺が知っている部員はそういうのばかりで、ちゃんと描いてるのかよ、と毒づいたこともある。何が好きかは本人の自由だが、場所や時に構わずやられるのには参る。
こんな田舎にある高校は、そもそも部活も人数も少ない。なのでてどこかの大会で優勝した、だなんていうのはほとんどない。
しかし、時おりコンクールで入賞作品が出るのは知っている。
「何か用事?」
後ろから声をかけられたことに、俺はひどく驚いた。振り替えると、そこにはエプロンをした女子がいる。
「あ、その、川瀬先生は」
「もうちょっとしたらら戻ってくるから、待ってたら?」
そういうとその人は絵の前にいき、椅子に座りパレットを持つ。
この人が描いたのか。
思わず「これ、先輩が描いたんですか」といっていた。先輩は頷く。あんまりうまくないけど、と。
そんなことはなかった。俺はそういう。先輩はわずかに笑ったまま、絵にまた顔を向けた。
――――それからすぐ川瀬先生に会うことが出来た。あれが倉田先輩との出会いだ。