Dr.早瀬

「っーー」

「普段はどこか壁を感じるけど、
ここにいる時はなんか無防備だから。」

と、こちらに顔を向けて
じっと見てくる。

その目があたしの心を見透かそうとしてるみたいで

「っ、変わんないわよ、どっちも」


合わせた視線をすぐに逸らす。




自分では分からない自分の変化に、
研修医が気づいていることで
感じたことがない感情に苛まれる。

「…でも、」

あまりに真っ直ぐな研修医の
視線に耐えきれなくて

「この広場は、すき。」

膝の上の強く握りすぎて
白くなった手を見つめながら
そう言うと、

ふっと笑って

「知ってる。」

優しくそう言う早瀬先生を
盗み見るように見上げると、

「ははっ!
何て顔してんだよ。」

くしゃっと笑った

いつもより砕けたその表情に
少し胸が痛くなった。

すぐ視線を膝の上に戻すと

「握りすぎ。血、出るぞ。」

ぎゅっと握っているあたしの手に
早瀬先生の大きな手が被さり、
両手を解かれた。


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