Dr.早瀬

病室に戻ってベッドの淵に腰をかける
様にして座る。

「で、何があったんだよ、
んな顔して。」

涙はもう引いていた。

あたしの目の前に来て
ポケットに両手を突っ込み、
片足重心気味に立っている。

「別に。」

そう言いながら足をベッドの
布団に入れる。

「別にって顔してねーだろ。」

「…うるさい。ほっといて。」

ほんと、とことん素直じゃない。

「はあ…」

隣から呆れた様なため息が
聞こえてきた。

それが突き放されたようで
悲しくなり、おさまっていた涙が
再び目に浮かぶ。

がたっ

もう出て行くんだと悟り
むしろ早く出てけって思った時、

隣から椅子を引いてきて
そこに座る。

思わずぱっと左を見ると

困った顔をして

「ほっとけるわけないだろ?
何があったんだよ。」

そう問いかけてきた。















その声、その顔、その空気感、
その全てに、今まで我慢していたモノが
一気に溢れ出す。

手で顔を覆い、涙を流す。

その間、何も言わずただただ
頭を撫で続けていてくれた。

この人は、やっぱりあたしに
安心を与えてくれる。

安らぎをくれる。

頼っても、甘えても良いんだと、
そう思わせてくれる。


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