Dr.早瀬
なんなの。
…なんで黙ってんの。
「なんなのっ、
用ないなら早く出てって!」
気まずさに限界を感じて
布団を握りしめ、
握りしめ過ぎて白くなった
自分の手を見ながらそう言った。
「俺がしたくてしてる。」
えーーーーー?
都合のいい空耳かと思った。
何て言った?
顔が見れない。
「俺が来たくて来てる。
仕事としてじゃない。」
「っなに、言ってんの、」
言葉一つ一つが、しどろもどろになる。
「もう寝ろ。
疲れてんだろ。」
あたしの言葉を無視してそう言うと
ガラガラっ
研修医は出て行った。
話聞いてくれて、ありがとう。
その一言すら言えなかった。
『ありがとう』すら言えないなんて。
その上だいぶきついこと言っちゃったよね、あたし。
だって何にも言わないし…
かと思ったらいきなり意味わかんないこと言い出すし、
「もうっ、なんなのよっ。」
あたしの焦ったような熱が帯びたような
声は、1人きりの病室に、響いて消えて行った。