Dr.早瀬
「今日は行かねえの?」
勇人は何もなかったかのように
話しかけてくる。
「…あんたに関係ないでしょ。」
勇人の顔を見ず、窓の外を見ながら
そう答える。
「…由那。」
あたしを呼ぶその声は
勇人には似合わない、
少し切ない声で。
「由那…」
自然と勇人の方に顔を向けてしまう。
入口 付近にいたはずの勇人は
いつの間にかベッドの方まで
近づいてきていた。
「由那。昨日は悪かった…
少し、悪ふさげが過ぎた。」
昨日のことで、もう顔も見たくないと
思っていたはずなのに
「…もういいよ。」
勇人がほんとに申し訳なさそうに
しているから、
自然とそう言ってしまっていた。
「でも由那が取り乱して
心配してくれて、
俺すげー嬉しかった。」
は?
「…出てって。」
こっちの気も知らないで。
簡単に許したあたしが馬鹿だった。
「ちげーよ。
由那が一瞬でも、俺だけのこと
見てくれたことが、
すげー、嬉しかったっつうか…」
左手を首に当てながら
途切れ途切れに言葉を繋いでいく
「つうか、あんたじゃねえよ。
勇人だろ。ちゃんと呼べ。」
「そんなのどっちだっていいでしょ?」
あたしはまた窓の方に顔を向ける。
「良くねえよ!」
そう言うと、窓側に回ってくる勇人
「勇人って呼べよ。」
真剣な顔であたしのことを見てくるから
思わず息を呑んだ。
「…な、によ。」
声が震える。
「呼べって。」
真剣な顔のままあたしを見つめてくる。
コンコンっ
「由那さん?入るぞー。」