Dr.早瀬
「じゃあお母さん帰るわね!」
お母さんが来てからどのくらい
時間がたっただろうか。
研修医はもういなくて
夜ご飯ももう食べ終わり、
外は既に暗くなっていた。
「うん、フルーツありがとうね。」
椅子を直すお母さんに微笑みながら
声をかける。
「早く寝なさいね。」
優しく微笑み返され、頷くと
名残おしそうに病室から出て行く。
お母さんはドアが閉まるギリギリまで手を振っていた。
それに返すように笑って手を振っていた。
何時間か振りの静かな病室。
虚しくて、
無性に、
あいつに会いたくなった。
「…けん、しゅ、い」
聞こえてきた自分の声が
情けなすぎて、少し笑える。