Dr.早瀬
「それでも、好きだ。お前が。」
目をそらしたいのにそれが出来ない。
それはきっと、研修医の真剣な目がそうさせる。
嬉しいなんてもんじゃなくて。
ドキドキした、なんてもんでもなくて。
本当は、柄にもなく、飛び跳ねたいくらいだった。
けど、あたしはーーーー、
「…ばかなの?
あたしそんなんじゃ落ちないよ。」
素直になるなんてことは出来なくて。
視線を布団に戻して俯く。
もしあたしが、あたしも好きだと言ったところで、あたしたちに未来はきっとない。
あたしなんかと付き合うんならもっと他にいい人がいるはず。
そんなのただの建前だ。
本当は、恐い。
研修医といると、自分が自分でなくなってしまう気がする。
とことん嫌われて、とことん嫌な奴として死んでいくって決めていたのに、好かれたい、好きになってほしいと思ってしまう。
死ぬのがこわくなってしまう。
涙が出そうになって必死で唇を噛む。
布団の中で両手をぎゅっと握りしめ、
早く出て行け
飽きれて嫌いになれ
心の中でそう願っていた。