Dr.早瀬

そのあといくつか体調のことなどを
聞かれた。
それを研修医がカルテに書いていく。

それが終わると、

「何か質問など、ございますか?」

林先生があたしとお母さんを交互に
見る。

「いえ、特に。」

あたしがそう答えた。

「まあ、また何かあれば私か
早瀬先生に聞いて下さい。」

そう言うと、林先生はちらっと
研修医の方に目をやった。

「最後に早瀬先生。一言。」

「あ、はい。色々 不安だと思いますが、
林先生と僕が最善を尽くします。
一緒に病気と立ち向かっていきましょう。」

あたしを真っ直ぐ見つめ、
研修医が言った。

研修医の真っ直ぐな目のせいか、
いつもなら安っぽいと感じるその言葉に
何故だかあたしはすごく安心感を覚えた。

その目はさっきの嘘くさい笑顔の時とは違っていて

それがなんだか悔しくて、

「っ、そういうっ安っぽい言葉しか言えないところが研修医っぽいって言ってんのよ!」

そんな、思ってもない言葉をつい
発してしまった。

それに気づいた時はもう既に遅くて、

「由那、あなたいい加減にしなさい!
今すぐ先生に謝りなさい!」

お母さんが珍しくあたしを怒鳴った。

「由那!!」

どうしていいか分からなくて
そのままあたしは部屋を飛び出した。



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