Dr.早瀬

今まで、周りに自分の弱いところを
見せないようにしてきた分、
何もかも、見透かしてる様な
研修医の目が怖かった。


広場について、
ベンチに腰掛けながら
そんなことを考えていた。

ふと、意識を現実に戻す。

病院の服を着た子どもたち
5、6人が騒いでいる。

すこし先には
女の人たちが優しい目をして
子どもたちを見ながら、
楽しそうに話していた。

あの子たちのお母さんかな…

もう1度、子どもたちの方に
視線を戻した。

みんながみんな、笑っている。

あたしにもあんな、無邪気な時が
あったんだ。

あたしもあの子たち位の時は、
素直で無邪気で真っ直ぐで、
自分の病気がどんなものかなんて
あまり知らなかった。

ただ、みんなと比べて
病院で生活することが多い。

ただそれだけだと思ってた。




いつからだろう、

友だちを必要としなくなったのは。

いつからだろう、

素直に自分の思ってることを
相手に伝えられなくなったのは。

いつからだろう…





















あたしは1人だと
感じるようになったのは。



「由那さん?」

その声で、また現実に引き戻された。

声のした方に顔を向けると、

「あ…」

「お母さんが、心配してますよ。」

そう言うと、少し微笑んで
近づいてくる。






だから嘘くさいんだって。
その顔。






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