蓮華亭へようこそ


カーテン越しでも感じれるほどの強い陽ざし。

窓の外は灼熱の世界。

耳障りな蝉の声が昼夜を問わず耳に届く。


クーラーが効いていると言え、

寝苦しい事に変わりはない。


なのに、なのに………。


俺の真横でスヤスヤと

気持ち良さそうに寝息を立てる彼女。


今年の4月から都立高校に勤務している。

教師の道へ進んだ彼女は

夢を叶えたという充実した生活を送る一方、

『教師』という職業に

24時間拘束されているように見える。


だって、だって………。


「………ごッ……とぅ……くん、…………さとぅ……くん……」


何で、寝言で俺以外の男の名前を口にしてんだよッ!!

夢の中にまで、教え子の奴らが出てくんのか?!


マジでありねぇ。

無意識とは言え、俺のいない時に言って欲しいもんだ。



俺は彼女の耳元にそっと囁く。


「先生?………先生の彼氏って、何て名前?」


すると、どうだ!!

彼女は寝ているのにもかかわらず、

照れるように微笑んで、恥じらうように肩を竦めた。

そして……―――……


「じゅっ……ん////」

「ッ!!/////」


ヤバッ!!

俺の方がマジで照れる////

手で口元覆い、声が漏れるのを制御して。


そんな俺の気持ちなど伝わる訳も無く、

彼女は依然として眠り姫のまま。



そんな彼女を見つめていて、ふと思う。


もしかして、こんな可愛い『女』の顔を

高校生と言うガキの奴らに見せてんじゃねぇよな?

………いや、絶対に見せてんな。


きっと、男子生徒から熱い視線を向けられてんだろうな。


はあぁぁぁ~~。


無意識にため息を零していると、


「…………たかのっ………先…生……」

「ん?」

「………のっ……先生」

「ッ?!!」


今のは聞き逃せねぇな。

幻聴と思いたかったが、確かに『先生』と言っていた。

高野先生って誰だよッ?!


男子校に勤務している彼女の口から

初めて生徒以外の名前を聞いた。


俺は居てもたってもいられず、


「……ぁおいっ!……葵っ!!」

「……んっ………んん?」


寝ぼけ眼で俺を見ている。

可愛すぎて、思わず唇を奪いたくなる衝動を抑え、



※次ページに続く


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