蓮華亭へようこそ


「高野先生って誰ッ?!」


俺は苛々した感情をむき出しにした。


解っている、これは明らかな嫉妬だと。

でも、抑えれる状況じゃない。


葵が毎日仕事に追われるように、

俺だって、医師として日々追われている。

仕事に優劣を付けるのは

間違っていると解っているが、

俺の仕事は『生死』に携わるもので

一瞬の気も抜けない……そんな世界。


だからこそ、こうして一緒に居られる時間を

出来るだけ、寄り添っていたいと言うのに……。


俺の視線が怖いのか、

身体を硬直させ、視線を泳がせる。


それって、…………どういう意味だよ。


もしかして、その高野先生という奴に

言い寄られたりでもしてんじゃないのか?


「葵?」

「どっ、どうして、潤くんが知ってるの?その………高野先生を」

「それはどうでもいいだろ。で?………誰だよ、ソイツ」


明らかに憤慨してる、俺の口調。

普段なら『ソイツ』とか絶対言わない俺だから。


俺がジッと見据えるものだから恐縮して、

唇をキュッと一文字に結んだ。


そんな彼女をギュッと抱きしめ、心の中で念じた。

『単なる同僚』だと言ってくれ……と。



すると、


「高野……先生は、私の恩師です」

「は?」

「高校時代の担任で、今、受け持ってるクラスの担任です」

「……」

「前にも言ったと思うけど、私、副担任だから……」

「………それは聞いてたけど……」


………恩師?

俺の予想とは全然違ったけど、

もしかして、葵は……ソイツの事が好きだったとか?


「その、高野っていう恩師の事……好きなのか?」

「へ?」

「だから、先生としてではなく、『男』として」

「はっ?!………ありえない!!」

「何で言い切れんだよっ」

「だって……だって………」

「だって、何だよ」


俺は彼女を追いつめるように言葉を紡ぐ。

すると、



※すみません、もう1ページ続きます。



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