二番目の恋人
不自由な空
目の前に海が広がる。5月の海は、まだ肌寒く、Tシャツの上にピンクのカーディガンを羽織る。スニーカーに打ち寄せた波しぶきがあたり、ポツポツと濡れる。
「冷たい」声に出すと「こっちにおいで」
と肩を引き寄せられた。
人の手はこんなにもあたたかいものなんだ。
「あったかい」
その手に右手を添える。
「あんまり冷やすと、ほら、驚いちゃうよなぁ」
永(ひさし)が私のお腹に手をやる。
そこにまた私の右手が添えられる。
大きくせり出したお腹の中でまだ見ぬわが子が蹴りを入れた。
「おっ、蹴ったぞ」
永が嬉しそうにする。
「うん」と頷くと上空から飛行機の音がした。
成田空港が近いここは、海よりも空の方が賑やかなくらいだ。あの飛行機には、どれだけの人が乗っているのだろう。どれだけの人の想いが乗せられているのだろう。