星屑の涙


ジャケットを脱ぎハンガーにかける。


後ろできつめに縛った髪をほどき、ほぐすように首を一振りする。


そうすることで仕事の緊張が解けたのは、いつまでだっただろう。



腕時計を外しながら、何の気無しにテレビに目をやって驚いた。


映し出された景色が、見覚えのあるものだったからだ。



『…このアパートの部屋から、身元不明の男性の焼死体が発見されました。

警察は、この部屋の住人の男性と連絡が付かないことから、死体の身元は……』



アパートの一室で火事。

その部屋から焼死体が発見されたという。


そこは、最寄り駅から私の住むマンションへの帰り道にある場所だった。


今もまさにその近くを通ってきたのに全く気がつかなかった。


まぁこんな時間だから警察や消防の人も居なくて当然かもしれない。
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