星屑の涙
「そう。じゃぁ早速明日から入れる?最初の3カ月はバイト扱い。
その後、やる気と能力によって社員にする。もちろん戸部さんがバイトのままが良ければそれでも良いし、契約社員っていう方法もある。
ま、それはこれから考えていけばいいよ」
「はい!ありがとうございます!頑張ります!よろしくお願いします!!」
私は思い切り頭を下げた。
「…ははっ、今時君みたいなアツイ女子も珍しいよね。
この世界に惹かれたきっかけでもあるの?」
履歴書をクリアファイルに仕舞いながら、店長は聞いてきた。
「…とある人が、調理の仕事をしてて…その人のことをもっと知りたいと思ったのがきっかけです。
…でも、その彼はもう、この仕事をしたくでも出来ないから…私が代わりにっていうか……
あ、でもそれだけじゃないんです。
私、もともと料理とか全然しなかったんですけど、今ではすごく好きになって…」
「…その彼って、戸部さんの恋人?」
どこか、からかうように聞いてきた。
店内の離れたテーブルでは、親子連れが笑顔で料理を頬張っている。
違うテーブルでは、若いカップルが互いの料理を食べ合っていた。
彼もきっと、こんな景色を見ていたのだろう。
自分の生み出すものが人を幸せにする。
人は生きている限り、どれだけでも繋がることができる。
何かを生み出し、いつかは失い、それでもまた前を向くことができる。
星屑ほどの涙を流しても、
私はきっと、強く生きていける。
「…彼は、私の“大切な人”です」
《end》