BEAST POLICE
「言いたくはないが」

男性は、ドアにかけている環の手に触れた。

ピクリと、環が震える。

「芸能界で力を維持するには、裏社会の人間とも懇意にする必要がある…僕のプロダクションはね、京阪神連合とも繋がりがあるんだ…先日の抗争事件で随分弱体化はしたものの、まだ日本最大の暴力団としての力は持っている…僕の意に反するという事は、京阪神連合の意に反するって事だ…わかるね?」

「……」

無言のまま、頷く環。

「物分かりのいい子は好きだよ。環ちゃんは賢いね」

ツツ、と。

男性の太い節くれだった指が、環の白魚のような指、そして手の甲をなぞる。

嫌悪感に、環は身を竦めた。

「何…たった一晩だよ…たった一晩我慢すれば、君は一生芸能界での活躍を保障されるんだ…気持ちよくなれて地位も確保できるなんて、悪い話じゃないと思うがね」

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