BEAST POLICE
「尚、発砲は許可するが、犯人の射殺は許さない。対策本部は人質の無事救出が最重要目的であり、かつ犯人を生け捕りにする方針だ」

「何故です?そんな悠長な事を言っている場合ではないのでは?」

刑事部長の言葉に、倉本が怪訝な顔をする。

「…犯人である政治思想組織は少々特殊でな…仮に犯人を射殺した場合『殉教者』として神格化され、他の集団に影響を与えると考えられている」

「まるで宗教だな」

巽の言葉に、刑事部長は頷く。

この政治思想組織は、過去に銀行に対する連続強盗事件や、銃砲店襲撃事件で猟銃店を襲って銃と弾薬を手に入れるなど、特異かつ凶暴な犯行を繰り返しながら逃走を続けていた為、警察は都市部で徹底した職務質問やアパートの居住者に対するローラー作戦を行い、警察の総力を挙げて行方を追っていた。

警察に追われていたメンバーは、関東の山岳地帯に警察の目を逃れる為の拠点としてアジトを構え、潜伏して逃避行を続けていたが、程なくして警察の山狩りが開始され、また、外部からの援助等も絶たれ組織の疲弊が進んでいた。

そしてアジトにおいて仲間内で相手の人格にまで踏み込んだ猛烈な思想点検・討論を行うようになり、その末に思想改造と革命家になる為の『修正』と称しリンチ殺人事件を起こすなどして内部崩壊がすすんでいた。

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