ドロップ・ダスト【完】
「ああ、あなたは確かB組の村上さん。ゴミを捨てに来たんですね。わざわざ遠くまでお疲れ様です」


何事もなかったかのような素振りには意表を突かれた。

や、あの……あなた今、貰った手紙破り捨てましたよね?
おずおずとそれを訪ねれば「なんのことですか?」と尚も笑顔のままそう返された。
ちょっと待て、とぼけるつもり?
ここで大人しく私の見間違えでした、と引いていれば良かったものを、自分の目が節穴ではないことを証明すべく私はつい食ってかかってしまったのだ。


「とぼけないでください!私、今のちゃんと見てましたから!」


そうしたらお雛様の私を見る目が、モンタージュ写真のように変貌した。
白の面積を増やした眼差しでこちらを見下しているお雛様に無言の圧力をかけられ、私はわなわなと身を震わせながらたじろいでしまう。
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