ドロップ・ダスト【完】



かくしてひょんなことから淡い幻想をぶち壊されてしまった私の高校生活は、人知れず変化を始めた。
言わずともだが、従来通り雛沢を崇めるような目で見ることは無理な要求に等しくて、友人がキャーキャー言ってる隣では適当に空笑いをするしかない。
お弁当を食べてる時にお雛様(笑)の話題が出たりしても、先日の一件を思い出してはご飯が不味くなる一方。

そんな私の複雑な心境を知ってか知らずか、雛沢の奴め、みんなの前ではあの美しさに満ち溢れた優雅な振る舞いで、今までと同じ接し方をしてくるくせに、周囲に誰もいないと分かるや否や、突然態度を一変させてくる。
本人曰く「バレた以上、お前の前でなら素でいられる」とのメリットがあるらしく、ゴミ捨て当番の最中や部活後の帰宅途中等、私が一人でいるふとしたチャンスを狙って寄ってくる頻度が増えた。

嬉しくないどころか迷惑以外の何ものでもない。
しかもそうされるうちにベールを剥いだ雛沢の下劣な面がどんどん浮き彫りになっていった。
みんなの前でトーンを上げて上品に話しているせいで喉に絡んだ痰を、親父みたいにペッて道端に吐いたり、お風呂に入り忘れた日は香水で誤魔化してるとか。
すれ違う度に良い匂いがすると思っていたらこの醜悪な事実ときた。
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