【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
絵画展の提出期限まで残すところ二週間を切った。

一枚の絵にここまで時間を費やしたのは初めてで、私は今回の作品に相当力をいれている。

放課後は三脚型イーゼルに立て掛けたキャンバスと睨めっこして、細かい箇所でも納得がいかなければ何度も色を塗り直した。

私がその作業を進める一方で、大会を控えているらしい桜夜くんも部活に精を注いでいるようだ。

なんでも有名な大会らしく、そういえば去年もこの時期はやたらその話題で盛り上がっていたなぁ、なんて記憶を遡ってみる。

あの頃はまだ寺島のこともそこまで意識していなかったから、陸上部にもあまり関心が無かったんだっけ。


「そしたら先公のヅラが飛んでってみんな大爆笑してさァ。ゆでダコみたいに顔真っ赤にしていきなりキレてきた時、噛みまくってて何言ってんのかわかんねーの」

「そりゃ先生も災難だっただろうねぇ」

「笑い過ぎて涙出たからな俺」

「そこまで?確かに笑わない方が無理あるけどさ」


桜夜くんとは廊下ですれ違えば挨拶を交わすようになり、通学時にも頻繁につかまっては遠慮なしにこき使われていた。

昼休みにはこうして桜の木の下で時間を共有することが増えて、他愛もない話で笑い合ったりしている。
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