【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
重なった二本の時計の針が12を指している、そんな深夜。

携帯に着信があり、ディスプレイに表示されている名前には嫌な予感しかしなかった。

桜夜くんめ、こんな時間に一体何の用だ。

心当たりが無いからこそ用件が気になってしまい通話に出た私だけど、桜夜くんが開口一番に、


「今から迎えに行くから付き合え!」


それだけ言って私に反論の隙も与えず電話を切ったから、溜め息が出るのも無理はない。

かけ直しても出てくれないし、仕方なしに身支度をした私は静かに家の外に出た。

流れで連絡先を交換した時から、いつかは時間帯を弁えないで何かを強制してくる日が訪れるであろうと覚悟はしていたけど、どこまで俺様街道突っ走るつもりなんだ彼は。

だいたい明日は大事な試合があるはずじゃ?

部内でもトップクラスの実力って噂だけど、それで自信過剰になりすぎて余裕ぶっこいてるんじゃないでしょうね。

最高のコンディションで勝負に臨むのも、立派な選手として必要な条件だと思うんだけどな。
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