【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
私は桜夜くんがいなくなった現実を拒絶しようとしているのだ。
中学生にもなって現実から目を逸らそうだなんて、どれだけ子供なんだ。
……そう、私は子供なのだ。
少し背伸びしてマセた態度をとったり強がったりもするけれど、精神的にはまだまだ不足だらけの所詮はお子様。
だから自己抑制が利かなくなった私は、こんな馬鹿げたことをしてしまったのだ。
「麻倉……お前何してるんだ……!?」
窓の外は薄暗く、部員は私しか残っていない静まり返った美術室。
背を向けていた廊下から声をかけてきたのは寺島。
椅子に腰かけた私が向かっていたキャンバスに描かれているのは完成間際の絵画。
その桜の桃色の上にべっとりと黒の絵具のついた筆を走らせたのは、まぎれもなく自分自身の手だった。
「桜夜くんがいなくなっちゃったのなら、もうこれ描く意味ないから……」
「だからってそんなこと……」
「……ねえ寺島、本当に知らないの?桜夜くんが転校しちゃった理由」
中学生にもなって現実から目を逸らそうだなんて、どれだけ子供なんだ。
……そう、私は子供なのだ。
少し背伸びしてマセた態度をとったり強がったりもするけれど、精神的にはまだまだ不足だらけの所詮はお子様。
だから自己抑制が利かなくなった私は、こんな馬鹿げたことをしてしまったのだ。
「麻倉……お前何してるんだ……!?」
窓の外は薄暗く、部員は私しか残っていない静まり返った美術室。
背を向けていた廊下から声をかけてきたのは寺島。
椅子に腰かけた私が向かっていたキャンバスに描かれているのは完成間際の絵画。
その桜の桃色の上にべっとりと黒の絵具のついた筆を走らせたのは、まぎれもなく自分自身の手だった。
「桜夜くんがいなくなっちゃったのなら、もうこれ描く意味ないから……」
「だからってそんなこと……」
「……ねえ寺島、本当に知らないの?桜夜くんが転校しちゃった理由」