【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
「ははっ、ざまあねぇなァ」


頭上から予期せぬ声が降ってきたのは。

恐る恐る上を見上げれば、どこかで見たことのある可愛らしい顔がさぞかし愉快そうに私を見下ろしていた。

さっき見た時は気付かなかったけど、まさか木に人が登っていたなんて。

彼は確か寺島と同じ陸上部に所属している曽根くん。

寺島の練習姿を見るべく私が校舎の窓からグラウンドを観察しては、一緒にいる友達が彼を指差しカッコイイと黄色い声を上げていることがしばしばあり、それなりには印象に残っている。

女の子と見紛うほどの愛らしい顔付き。

そのくせやることがガサツで横暴でえぐいとの噂もあって、以前先輩とタイマンをした時は相手に怪我を負わせたとかなんとか。

ただ顔は良いから一部ではモテているらしいけど、私はどうも苦手なタイプだった。

同じ学年で同じ部に入っているから当たり前なのだろうけど、正直寺島が曽根くんとつるんでいるのをあまり良い目では見れなかったし。
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