【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
「この絵ってこのあとどうするんだ?」

「多分学校のホールに飾られるんだと思う」


今日は絵画展最終日。

初日は家族と見に来た私だけど、今は寺島と二人でデートもかねて会場を訪れていた。

桜夜くんが転校したことによって落ち込んでいた私を、隣で優しく励まし続けてくれた寺島とは付き合うことになったのだ。

時間差が生じたとはいえ、やはりあの桜の木の下でした告白は報われるというジンクスは本当だった。

こんな形で上手くいくとは予想だにしていなかったけれど。

思い返せば寺島にフラれたことが、桜夜くんと私が親しくなったキッカケだった。

初めは噂通り捻くれた性格の厄介な人物という認識でいたのに、気が付ければ私は桜夜くんの魅力に惹かれていった。

ただ気付くのが遅かった。遅かったがゆえに後悔ばかりが付き纏った。

私は最低な女だ。元々寺島が好きでありながら失恋して、そのあと桜夜くんに心移りしていって、でも彼が遠くに行ってしまったことで生まれた寂しさを埋めてくれた寺島に結局縋り付いて。

なんて都合の良い人間なんだ。図々しいにも程がある。
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