【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
けれどこうして寺島が構ってくれることで、私の気が幾分楽になったのは否定できない。

単純で前向きで、なのに臆病な小心者の駄目な私。

もう桜夜くんはこんな最低な私の前に姿を現して、あの意地悪そうな笑みを見せてはくれないのだろうか。


「そろそろ帰るか」

「そうだね」


もう結構な時間いたし、私にしてみれは二回目というのもあり若干飽きているのも本音だった。

このあとは駅を適当にぶらついてご飯でも食べて帰ろうと話をしながら、私はその場をあとにしようとしたのだけれど、なんとなく――そう、本当になんとなく、背を向けている自分の絵がある方を振り返ってしまったのだ。

そして目に映った横顔に私は胸を強く締め付けられた。

人ごみというほどの人数ではないけれど、それなりの人が行き交っている通路。

その奥に飾られた絵画の前にいた彼は、今私の脳を支配している人物に違いなくて。
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