【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
「……さくや、くん……?」
「……ん、どうかしたか?」
「ごめん寺島!ちょっと待ってて!」
「は?……って、おい!麻倉!」
考えるよりも先に体が動いていた。
私はまるで障害物のように邪魔だと感じる見物人をさけて通路を走る。
こちらに気付いた桜夜くんが慌てて身を返して逃走を始めた。
どうして逃げるの?何のためにここに来たの?
桜夜くん、私もっとあなたと向き合って話がしたいよ……!
陸上部のエースとも呼べる桜夜くんと、専ら文化系の私じゃ瞬発力も持久力も差がありすぎる。
見失わないように追いかけるのが精一杯で距離は離されていくばかり。
仕舞いに焦り始めた私はビルの外に出て最初の交差点を渡り終えた時、足をもつれさせて転倒してしまった。
膝を見れば掠り傷から血が滲み出てきている。
だけどこんな傷、胸の痛みに比べたら屁みたいなものじゃないか。
周囲にあまり人がいなかったのが救いだけど、タクシーの運転手さんがこちらを見て笑っていた。
「……ん、どうかしたか?」
「ごめん寺島!ちょっと待ってて!」
「は?……って、おい!麻倉!」
考えるよりも先に体が動いていた。
私はまるで障害物のように邪魔だと感じる見物人をさけて通路を走る。
こちらに気付いた桜夜くんが慌てて身を返して逃走を始めた。
どうして逃げるの?何のためにここに来たの?
桜夜くん、私もっとあなたと向き合って話がしたいよ……!
陸上部のエースとも呼べる桜夜くんと、専ら文化系の私じゃ瞬発力も持久力も差がありすぎる。
見失わないように追いかけるのが精一杯で距離は離されていくばかり。
仕舞いに焦り始めた私はビルの外に出て最初の交差点を渡り終えた時、足をもつれさせて転倒してしまった。
膝を見れば掠り傷から血が滲み出てきている。
だけどこんな傷、胸の痛みに比べたら屁みたいなものじゃないか。
周囲にあまり人がいなかったのが救いだけど、タクシーの運転手さんがこちらを見て笑っていた。