Winter Love
◆はじまり
たとえば、あの時、
ああいう行動をとっていなかったら
今の私はどうしていたんだろう。
隣にいるこの友達が、
すれ違う誰かが、まったく違う誰かに変わっていたかもしれない。
*
本を読むと、心が安らぐ。
今年の夏休みは、50冊。
去年は、受験生だったから、30冊に終わってしまったけど、
今年は、華の高校一年生。
50冊安易にこなせてしまうだろう。
読むジャンルは、様々。
恋愛小説だって時には読むし、ファンタジーだって、サスペンスだって、
どんとこいだ。
そんな私にも、付き合っている人がいる。
中学1年生のときから。
夏休みには、3年目を迎える。
だからといって、私たちには恋人らしい雰囲気もなく、
かといって友達という感じもない。
恋人未満、友達以上…といった感じだろうか。
「みさ!」
彼のきれいな声が私をよんだ。
男の子らしいちょっと低い声。
でも、私を呼ぶその声は、いつも透いて聞こえてしまう。
「わるい、遅くなって!
行こうぜ、ほら映画のチケット。」
久しぶりに会った彼氏。
1か月ぶりのデート。
自然と微笑んでいくはずの顔が、緩んでいかない。
私は、持って行った本を鞄にしまった。
風水のところに腰かけていたためか、お尻がちょっと痛い。
こういう時、女の子はどういう表情をするんだろうか。
にこっと笑って、天使みたいな顔をむけるんだろうか。
はたまた、うるうると会えた喜びから泣いてしまうんだろうか。
今の私は、
きっと普通の顔だ。
恋をしてる女の子の顔じゃないはずだ。
すれ違ったどこかの恋人さんの様子を見て、
私はそう確信してしまった。