Winter Love
◆明日へと動き出す
席替えがあった。
岡本君が隣になった。
彼はクラスで一番おもしろくて、楽しくて、笑顔が多くて、
すっごく素敵な人。
次第に話す回数も多くなり、今では毎日話すことができる。
彼と話している間は、もう一人の彼のことは忘れられて。
そんな風に、高校2年生を過ごせたせいか、
もうあの人のことは……
元カレのことは、
今ではすっかり頭から消えた過去の人になれた。
春がまた来て、私たちは高校3年生になった。
結局彼とはクラスが離れてしまって、
かなわぬ恋だったけど、でも、本当に彼には感謝してる。
本当に。
私が卒業式の日、彼にそのことを伝えたとき、
彼はちょっとびっくりしながらも、
「よかった。」
そう言って、またあの笑顔で微笑んでくれた。
彼は、私にとってのヒーロー。
内緒だけどね!
森崎君のことを言えば、
2年生の秋の時、私は森崎君に告白された。
「好きだったんだ。
彼のことがまだ完全に忘れられてないと思うけど、
俺が忘れさせるから、付き合ってください。」
彼はお得意の真っ赤なトマトで、そう言ってくれた。
「私、もう元カレのことは、好きじゃないよ。」
「え?」
「でもごめん。。
私、岡本君のことが好きで、、叶わないってわかってるんだけど、
やっぱり彼に惹かれちゃうんだ。。
でも、元カレのことを忘れられたのは、森崎君のおかげでもあるから。
フラれたばかりの時、話しかけてくれてありがとう。
本当にありがたかったんだ。」
「うん、そっか。
うん。
フラれたのは残念だけど、
この一年俺が柏木さんの力になれてたんだったら、それでいいや!
ありがとう、そのこと教えてくれて。
これからも応援してるから。
一緒に頑張ろうね。」
森崎君は、赤いトマトをキラキラ実らせながら、私にそういった。
私は差し出された手を、しっかり握った。
しっかり。
元彼から連絡を取るのは、年に数回程度。
それも日常的会話。
前は、なんでこんなことしてんだろ、って思ってたけど、
もうそれもどうでもいいくらいに思えて。
彼はどう思ってるのかやっぱりわからないけど。
でも私は今思う。
彼と付き合えて、別れてよかったと。
「ちかこ、ほら写真みんなで撮るよ!」
「はーい!」
私が今、とびっきりの笑顔で笑うことができるのは、
森崎君、岡本君、ちかこ、家族、先生、クラスのみんな、
そして、元彼。
みんなに感謝しながら、
私はここ桜ヶ丘高校を卒業するんだ。
桜が舞う中を。