Winter Love
決意
卒業してから、
中学の同級生との同窓会があった。
もちろん別れてから、元カレに初めて会う。
ちょっぴり緊張はするけれども、
やっぱりもう友達として見ることができると思う。
「久しぶりー!
元気だったー!?」
「髪、のびてるー!
ちょっと大人びてるし、ばかみたい!」
みんながみんな、少し成長した姿を笑いあいながら、
会えなかった日々の思い出を語り合う。
「みさー!」
「なぎちん!!」
「きゃ!元気だったの!?
連絡はとってたけど、しばらく会えてないからさ!」
なぎちんは、中学の時の一番の友達。
遊ぶこともあったけど、
ここ一年はお互い進路で精一杯で、遊ぶこともできなかった。
髪を短くして、少し変わった彼女の姿を見て、
どこか寂しい気持ちを覚えつつも、やっぱりどこか嬉しかった。
彼女とは幸いにも同じ大学で、同じ学部。
「これからはもっと遊ぼうねー!」
彼女の笑顔が大好きだ。
「ねぇ、りつきと会った?
あそこいるよ?」
なぎちんが、声のボリュームを下げて、私に耳打ちする。
「あー、別れてから会ってないんだよねー。」
りつきとは、そうあの人のこと。
彼を少し見つめていると、彼がこちらに気づき、歩いてきた。
「ちょっと私、ご飯とってくるね。」
「ごめんね、
ありがと、なぎちん。」
なぎちんは、笑顔でごはんを取りに行った。
同窓員の友達が用意してくれたこの広い会場には、
豪勢なご飯が机の上に、広げられているのだ。
手にグラスを持ちながら、彼はあのころと変わった顔で、
こう言ってきた。
「久しぶり。元気してた?」
あの頃と変わった私は、こう返す。
「うん、してたよ。
ちょっと大きくなったね。
ちゃん大人になってんじゃん?」
「なってるわ。」
お互い思わず笑ってしまった。
「りつきは、どこ行くんだっけ?」
「広島。」
「そうそう、近いんだよね!
これからはよく会うかもだね。」
私が微笑むと、少し大人になった彼が笑ってくれた。
私が通う大学は広島で、ここ地元とは少し離れてしまう。
何の意味もない友達としての意味の、
「よく会うかもだね」になんだか違和感を覚えた。
あの頃と少しよく喋るようになった私と、
ちょっぴり無口になった彼と。
あんなに悩まされていた存在の人と、
今こうして自然に喋れてるなんて、本当人生分からない。
「なんか、不思議だよなー、
俺ら。」
「まあねー、
前までは付き合ってて、別れて。
こうして今、しゃべってるんだもんね。」
「ほんとだよなー」
私は思わず笑ってしまう。
「フラれた直後なんか、もーあたしやばかったからね!
本当、男嫌いの激しさよ!
笑えちゃうわー!」
「や、ほんとごめんなー。」
「ちがう、違う嫌味とかじゃなくて!
いつかこうして話してみたかったんだよね。
あんなに悲しかった日々も、こうして共有したかったの。」
りつきと別れて、私はいろんなことを学んだ。
別れたばかりの時は、
出会うカップルを見ると、
「どうせいつか別れちゃうのに」…と思ってしまったし、
恋話も苦手になっちゃったし。
失恋ソング聞いて泣いたり、映画見て泣いたり、いっぱい泣いた。
でも今は、こうして
その元カレと笑いあってそのことを話せている。
髪を耳にかける。
「髪、伸びたな。」
「うん、伸びたかもだねー。」
彼に微笑む。
「俺さ、あの時、余裕なくてさ。。」
「うん。」
「環境変わったしさ。」
「うん。」
「でも、今の俺なら、大人になれて、
変われたっつーかさ……。」
「うん。」
「だから……さ。」
「うん。」
「もう一回、俺ら。
その、なんつーか。」
彼の顔がだんだん下がる。
私は顔を上げて言った。
「あ、見て!
修造やっときたよ!
変わってないなー、修造!」
私の視線の先には、クラスで一番人気者だった、修造がいた。
りつきの肩を軽く二度叩く。
彼の視線をカーペットから、修造に移動させたくて。
「ほんとだ、変わってねーや!」
彼は笑う。
私も笑う。
「素敵な恋をしてね、りつき。
もう恋人同士ではないけど、
これから先も私にとってあなたは特別だから。」
「……うん、俺もだよ。」
望んでた彼から一番聞きたかった言葉を払いのけて、
私はゼロからまたスタートする。
なぜ人は恋をしてしまうんだろう。
失恋を経験した私でさえ、それは分からない。
だって、あんなに辛い思いをしたのに、
違う誰かを好きになってしまったのだから。
恋は辛い。
だけど、人を丸く成長させる。
素敵な恋を。
みんなが幸せになることを、私は今願う。
<Fin.>