恋のはじまりは曖昧で

「私、こっちに座るから弥生は浅村くんの隣ね」

「はい」

三浦さんは私に隣に座り、A定食のトレイをテーブルに置いた。
その三浦さんはニヤニヤしながら私と浅村くんを交互に見てからかうように言う。

「それにしても紗彩と浅村くんて仲いいよね。もしかして二人って付き合ってたりするの?」

「付き合ってません!」

三浦さんの質問に間髪入れず否定した。
冗談だと分かっていても、それに乗ることは出来なかった。

「俺だってコイツとなんてあり得ませんよ。誤解しないでください」

あからさまに嫌そうな顔をし、フンと鼻を鳴らす。
浅村くん的には本命の弥生さんが隣にいるので誤解はされたくないだろう。

さっきの浅村くんの顔が憎たらしくて、ホントのことをバラしてやろうかと意地の悪い考えが浮かんだけど、さすがに人としてそんなことは言えるわけがない。

「それはこっちのセリフです」

「やっぱり付き合ってないのか。まぁ、二人を見ていたらそんな甘い雰囲気は皆無だもんね」

三浦さんはケラケラ笑いながら言う。
そう思っているのなら、誤解しないでいただきたい。

普通に話しているだけで付き合っていると思われるのは不本意だよなぁ。
もしかして、他にも誤解している人がいるのかもしれない。
それだったら嫌だなあ。
モヤモヤした気持ちを払しょくするようにご飯を食べ進めた。
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