恋のはじまりは曖昧で
さっきの会話の流れのあとに“頑張れ”とか“応援してる”なんて言われたので、浅村くんは驚いたような表情をする。
そして、ハッとしたように私に視線を向けてきた。
即座に首を振り『私は何も喋ってないよ』と必死にアピールした。
核心的なことは何一つ話していない。
いぶかし気な目で見られたけど、私が話していないというのを分かってくれたみたいだ。
そして、浅村くんは三浦さんの言葉の意味を理解したのか「はい」と力強く頷いた。
「ねぇ、なんのこと?」
「いえ、何でもありません」
弥生さんが不思議そうな顔で聞いていたけど、浅村くんは首を振っていた。
まぁ、そうなるよね。
「もう、みんなして内緒なの?紗彩ちゃんは知ってる?」
今度は私に飛び火してきた。
もちろん、私も答えれるわけがない。
「いえ、私も何のことだか分からなくて」
「よかった、仲間がいて」
そう言って嬉しそうに笑っているのを見て、年上の弥生さんには失礼だけど、ピュアで可愛い人だなと思った。
浅村くん、これから弥生さんにどう接していくんだろう。
すごく興味がわいたのはここだけの話だ。
「じゃあ、私たちも戻る?」
「そうですね」
私たちは立ち上がると、トレイを片付けて食堂を出た。