恋のはじまりは曖昧で
なりゆきで
日曜日の朝、ベッドに寝転んでいる私の意識はまだ夢の中だった。
ピンポーン、ピンポンピンポン……。
インターホンを連打する音が聞こえて目を覚ました。
眠い目を擦りつつ、手探りでスマホを取り時間を見ると、九時を過ぎたところだった。
何もない休みの日は十時ぐらいまで寝ている。
こんな時間に誰よ、なんて思いながらのそりとベッドから降りた。
「さあやちゃーん、あーそーぼー」
聞き覚えのある小さな子供の声が耳に届いた。
寝癖を手で直しながら玄関のドアを開けると、男の子が笑顔で立っていた。
「コタ、どうしたの?こんな朝っぱらから」
「ママがね、きょうはさあやちゃんがあそんでくれるっていってたからきたの」
瞳をキラキラさせて言う。
いや、その顔は可愛いんだけどね。
「来たのって、コタ、ママは?」
「はぁい、呼んだ?」
ひょっこり顔を出してきたのは姉の真澄。
そう、私の初恋の竹中郁先生と結婚した、あの姉だ。
息子の竹中虎太郎と手を繋ぎ、二人揃って満面の笑みで私を見る。
嫌な予感しかしない。
「ちょっとお姉ちゃん、突然どうしたの?」
「今日、私たちの結婚記念日だから虎太郎を預かってって頼んだでしょ。覚えてる?」
「へ?覚えてるってそんな約束はしてないよ。確か、この日は暇?って聞いてきただけじゃん」
寝起きの頭で、姉からのメッセージを思い出す。