恋のはじまりは曖昧で
甥っ子は可愛いけど貴重な休日に朝から押しかけられるのはちょっと違う気がする。
仕方ないか、とブツブツ言いながら服を着替えた。
「さあやちゃん、クレヨンある?」
「あー、クレヨンはないな。そういえば色鉛筆があったような……」
クローゼットを開け、ゴソゴソと探していると筒に入った色鉛筆を見つけた。
筒に入ってるのが珍しく、しかも百円という安さに使う予定はなかったけど何となく買った記憶がある。
ルーズリーフと色鉛筆を虎太郎に渡すと、早速絵を描き始めた。
初めはおとなしく似顔絵だ動物だとお絵かきをしていたけど、だんだんそれも飽きてきたみたいだ。
他の遊ぶ物はない?と聞かれたけど、残念ながら私の部屋には子供が楽しめるアイテムがない。
昼ご飯を食べたあとぐらいから駄々を捏ねるようになってきた。
家にいてもうるさいので、仕方なく近所の公園に行くことにした。
公園に着くと、キョロキョロと周りを見回す虎太郎。
木々に囲まれたこの公園はブランコと滑り台、鉄棒の三種類の遊具しかない。
あとは砂場と土で盛られた小さな山ぐらい。
そんなに大きい公園ではないから、ここを利用している人は少なくて穴場といえば穴場の公園だ。
今日は一組の親子連れがいて、砂場で砂遊びをしている。
「さあやちゃん、ブランコのるからおして」
虎太郎は走り出しブランコに乗り、手招きする。