恋のはじまりは曖昧で
だけど、数回の呼び出し音のあと、留守番電話に接続された。
伝言を残すほどのことでもないよなと思い、そのまま電話を切った。
「コタ、海斗は用事があって電話に出れなかったよ」
「えー、いっしょにかけっこしたかったのに」
頬を膨らませる。
結局、虎太郎は拗ねている。
ホント、子供の扱いは難しい。
ご機嫌取りでもしようかと思っていたら、スマホが鳴った。
姉からスタンプ付きのメッセージが送られてきていた。
『悪いんだけど虎太郎の晩ご飯もよろしくね!』
はぁ、心の中でため息をつく。
どうせ、最初からそのつもりだったんだろう。
一言ぐらい文句を言いたかったけど、言ったところで私が晩ご飯を作ることは決定事項だ。
私は『了解!』とスタンプで返信し、スマホをバッグの中にしまった。
「コタ、パパとママは遅くなりそうだから今日は私と一緒に晩ご飯食べよっか」
「さあやちゃんと?うん、いいよ」
「コタは何が食べたい?」
「うーんとねぇ、ハンバーグがいい。あ、カレーもいいし……」
「どっちが食べたいの?」
「りょうほうはダメ?」
上目遣いで聞いてくる。
ちょっと、虎太郎!
その仕草は可愛すぎる!
どこでそんなテクニックを身に着けたの?
お姉さん、虎太郎の将来が気になって仕方ないよ。